Vol.03 オランダといえば・・・
オランダでは22日に選挙が行われ、移民反対、イスラム反対の極右が勝利しました。移民のひとりとしては、移民政策がどのように変わるのか少し不安はあるところです。 さて、オランダといえば、何が浮かびますか? 代表的なものは、風車、チューリップ、チーズ、サッカーなどでしょうか。芸術好きならフェルメールやゴッホやエッシャー、ビール好きならハイネケン。他にはうさぎのミッフィーの作者ディックブルーナもオランダ生まれで、いろんな観光名所でカスタマイズされたミッフィーを見かけます。(ミッフィーは、オランダにおけるドラえもんまたはアンパンマンのような存在か、もしくはいろんなところで観光客向けにカスタマイズされているご当地キティちゃんのような感じかもしれません。) 企業の経済活動においてのオランダの特徴は、持株会社(ホールディングカンパニー)に対する税率が非常に低く、優遇されているということです。そのため(創業者がケチ、、、ではなく倹約家で有名な)スウェーデンの会社IKEAの持株会社の本社はオランダにあります。他にもアメリカの大企業であるNIKEやNetflixのヨーロッパ本社もオランダあります。 デザインの視点でオランダというと、実はグラフィック、プロダクトデザイン、建築などの分野で確立されたダッチデザインというものがあります。(オランダにきて、近代的なビルのデザインにとても感銘を受けたので、そのうちまとめてオランダだよりでお届けしたいと思っています。) 話を戻しまして、オランダといえば・・・、今回は「風車」。ということで、今月のオランダだよりは「風車」から始まります。14世紀のオランダの風車から、現在の自転車へつながり、発想の転換で自然災害に取り組む未来思考を通じて、インクルーシブでサスティナブルであろうとするオランダをご紹介します。 2023年11月 purplea+ |
オランダと風車の歴史「God created the World but the Dutch created the Netherlandsこの世界は神が造ったが、オランダはオランダ人が造った」とオランダ人は言います。 |
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← 左横の地図上部の地図を比べると、オランダの南西部、北部のゾイデル海は堤防で閉じられ、現在はアイセル湖となり、その一部は干拓事業によりは陸地となっています。
オランダ人は、ライン河、マース河、スヘルデ河の三角州(デルタ)にできた湿地帯だったネーデルラント(低地地方)に、杭や土壁などで水の浸水を防ぎ、砂や土などで埋め立てて、住み始めました。この地は、アルプス山脈から運ばれてきたミネラルたっぷりの土砂によるもので、この土壌の豊かさがオランダを農業大国にした理由のひとつでもあります。 |
13〜14世紀頃になると、水面よりも高くすることで土地を作る埋立から、堤防を作り堤防内の水を抜いて土地を作る干拓へと進化するのですが、その時に大きな役割を担ったのが、オランダ名物のひとつである風車です。風車を利用する事で、広い土地の水を汲み上げることできるようになり、干拓後も風車により排水をコントロールして、土地を保ちました。 | |
そのように干拓によって造られた土地は国土の2割弱で、国土の1/4ほどが海抜0メートル以下、洪水などが起こると水没する土地は国土の6割となっています。
海抜0メートルといっても、太陽と月の引力によって、海面の水位は満潮時と干潮時で変わります。日本での潮汐(海面の昇降現象)は「日本海側では0.4m程度、太平洋側でも2m程度ですが、九州の有明海では最大6m(海上保安庁海洋情報部)」となります。オランダでの海面の水位の差は約1.4メートルほどですが、海抜下にある土地も多いオランダにとっては大きな差となります。 そのため、1683年9月1日から1684年9月1日の1年間、アムステルダムにあるアイ港のハーレム水門の干潮と満潮を計って、アムステルダム標準水位(Normaal Amsterdams Peil (NAP))が決められました。このNAPは、オランダだけでなくヨーロッパ諸国の標準標高となっています。 |
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風車は英語ではWindmillと書きますが、風(wind)で穀類などを挽く(mill)用途として利用されていました。オランダでは製粉以外にも干拓管理に利用され、風車の技術が進化していくにつれ、製材業や工業用品の加工などにも利用され、ますます発展していきます。製材業拡大や風車製造が木工技術の発展させ、木造の造船技術も進歩していきます。さらに、風車がより改良されたことにより、風を扱う技術が同じく風を動力として動く帆船に応用され、オランダ船として発展していき、オランダを海洋帝国と導いていくことになります。
そうやって、スリナムを植民地化したり、東インド会社のオランダ船で江戸時代の長崎にやってきて、日本と交易を始めたりするわけです。そして、それ以降も日本とオランダは強く結びついていて、そのおかげで私はオランダのビザが取得でき、こうしてみなさまにオランダだよりをお届けできるのです。 |
現在のオランダオランダ人が風車と共に造ったオランダ、一番低いところは海抜マイナス7メートルで、(海外領土を除いたヨーロッパの)オランダで一番高いところは、オランダ南部にあるファールス山(Vaalserberg)で、標高322メートル。なんと333メートルある東京タワーよりも低いのです。(オランダとは関係ありませんが、、、私がこれまで訪れた中で一番低いところはイスラエルで行った死海(当時、高度マイナス422メートルくらい)で、一番高いところはチベットのラサからヤムドク湖へ向かう時に通った山で高度4700メートルくらいです) 本当に低地の国、ネーデルラント! そのような平たい国なので、オランダ人の重要な交通手段のひとつは自転車。なんと、オランダでは人口より自転車の数が多いという、自転車大国であり、自転車先進国なのです。オランダの自転車先進国っぷりは、自転車だけでなく自転車専用道路がものすごく整えられているところにも表れています。 上の写真のように、車が通る道に併設されている場合は、一番端が歩行者用、次に自転車用(だいたい赤煉瓦色)車道の順で、はっきりと分かれています。 上の写真と同じ場所の反対車線にはトラム(路面電車)も走っています。その反対車線のトラムの駅側から撮った写真と自転車用道路側から撮った写真が下の写真です。 そんなに広くない道ですが、自転車用、歩行者用、車道ときちんと分けられているのがわかると思います。 自転車専用道路には、標識が立っていたり、自転車マークが道路についていることもありますが、だいたいは、色(レンガ色)と位置(車道の外側 or 歩道より中央より)で区別できます。自転車、キックボードが走行できます。自転車とキックボードが一緒になったようなものも見かけました。多分、電動自転車も電動キックボードも走行できます。 余談ですが、キックボードは和製英語のようなもので、英語ではscooterと呼びます。英語で「Kickboard」というと、水泳の時に使うビート板のことを指します。このキックボード、オランダではStepと呼んでいました。 原付バイクや小型の電気自動車も、標識に自転車とスクーターマークがついていると走行できます。 電動車椅子(と呼ぶのかどうかわかりませんが、椅子に乗ったまま移動できるもの)は、スーパーや図書館の中もこのまま入れます。つまり通路の幅と段差がないバリアフリー仕様が徹底されているということですよね。 |
進化し続ける自転車先進国のオランダ自転車専用道路は車道の横にあるとは限らず、郊外に行くと(公園の中を突っ切っていたりと)車の道路とは違うルートになったりします。前のページの小型の電気自動車が走っているのは、完全に車の道路と別で自転車用道路があったところです。 |
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自転車専用道路の中には建物の下を通っているものもありました。(自転車が遠回りをしなくていいように配慮されると同時に道路の上のスペースも無駄にしない設計となっています) |
自転車専用道路があるので、Google Mapでも自転車を選択すると、自転車用のルートを詳細に表示してくれます。 このようにどれくらい自転車専用道路(レーン)があるか、高低差がどれくらいか、教えてくれます。上り6m、下り4mと、あるようでないような高低差! アムステルダムは「ダム」とつくように、(上のGoogle Mapの地図の画像の下に位置する)アムステルという場所のためのダムが現在のアムステルダムなので、平均標高はマイナス2m。そのため、堤防にあたるところを超える時は若干の高低差があるのです。 |
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左のGoogle Mapは、アムステルダムの中央部(観光地でもあり、古い街並みで、道路も狭いが、トラムも走っている。けど、車はあまり走っていない地域)で、自転車ルートを見てみると、自転車専用レーンは0%。普段は自転車の私もこの地域を移動するときは徒歩かトラムを利用します。
さらに、都市部を離れると、町と町の間には自転車用高速道路もあると聞きました。 |
オランダには、自転車の専用道路があるだけではありません。電車や地下鉄(メトロ)には、自転車を乗せることができる場所があります。
*電車が乗せられる電車は、オランダだけでなくヨーロッパ全体であります。 |
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そして、電車や地下鉄のには自転車を停められるスペースが十分に用意されています。もちろん、無料です。アムステルダム中央駅の地下には1万台ほどの駐輪スペースがあります。今年完成したそうで、古い街であっても、都心であっても、自転車を利用しやすいように再開発しているのですね。 さらに、アムステルダムでは2030年からガソリン車の走行できなくなりますが、このように平坦な土地を活かして自転車専用道路だけではなく駐輪場などを整備することで、人々の暮らしやすさと同時に温室効果ガス排出削減にもきちんと取り組んでいます。 |
未来を見据えて過去にオランダが風の力を利用して土地を作って、現代では作った土地の特性を活かして自転車フレンドリーな街づくりを行っているところまでをお伝えしてきました。では、オランダは未来をどのように備えているのでしょうか。 多くの土地が海面下にあるオランダで、洪水や川の浸水などの災害はどう防いでいるのだろうと疑問に思っていたのですが、オランダの干拓の歴史を調べていた際に「デルタワークス」のことを知りました。 2000人近くの人が亡くなった1953年の洪水の後、オランダ政府はデルタワークス(計画)というプロジェクトを立ち上げ、年間の洪水の発生確率を1万分の1以下(一般的な沿岸都市の約100倍の安全)にするという高い目標を掲げました。(「想定外の災害」という言い訳が使えないような、規格外とも言える政策ですね) 当時のお金で20億ギルダ(当時のGDPの13%)、現在のリソースに換算すると、オランダが自力で火星に調査ロケットを3回は送れるような莫大な予算(1200億ユーロ)でしたが、最終的に議会は承認しました。 70年代に環境問題に大きな関心が持たれ、政府の計画に反対するムーブメントが起きたときは、柔軟に対応し、未完の部分を調整することで、地元の野生生物が保存できるように計画を見直しました。 最後のプロジェクトの一つは、ロッテルダムの400年の歴史がある建物を潰すこととなり躊躇しますが、人々の生活を脅かす訳にはいきません。どうするか悩んだ政府は解決策を公募した結果、大きな碇のようなものが運河の両側から水平に北海からの水を堰き止めるマースラントケリングと呼ばれる門が完成しました。 1954年に始まったデルタワークスは1997年に完了しましたが、その後も干拓した場所を自然に戻し、川幅を広くすることで湿原地とし、洪水の際のバッファ(余裕)にするという「Room for the River(川に空間)」という追加策を計画し実行しています。 その後もロッテルダムでは、洪水が起きた時には貯水池の役割を果たすよう、計画的に低い土地に地下駐車場や競技場などを配置する、ビルの屋上に木々を植えたり、水位が上がると浮かぶ建物を作るなど「洪水を起こさないようにする」ではなく「洪水になっても生き残れる」という観点で新たな都市設計を計画しているそうです。 上記の動画は、1953年の洪水からデルタワークス、ロッテルダムの新都市計画までをわかりやすく解説しています。5分ほどで日本語の字幕もついています。 水の排除ではなく共存、これは温暖化が進む地球では必須の考え方になるのかもしれません。オランダは自然災害に強い都市を技術や政策で造り、さらにはプロジェクトや都市デザインの輸出も考えているそうです。その場凌ぎではなく、時代にあわせて計画を修正することもでき、きちんと未来を見据えることのできる国から、私たちが学ぶことは多いと思います。 この観点からのロッテルダムのスタディツアーなどあれば、おもしろいかもしれませんね。(興味がある方がいらっしゃったら、企画・コーディネートいたします) |
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